光で防ぐバラの「うどんこ病」

山形県庄内総合支庁農業技術普及課 菅原 敬
農研機構基盤技術研究本部遺伝資源研究センター 佐藤 衛

はじめに

花きは種類が多く、営利栽培されている品目は1,000種類を超える。さらに花色や開花時期も様々であるうえに新たな種類の花きや新品種が次々と商品化されるため、植物病による被害も後を絶たない。花きは、花そのもの(花弁や蕾)はもちろんのこと、葉や茎も鑑賞の対象となるので花き生産における植物病の防除は極めて重要である。しかしながら、花きに使える農薬は非常に少なく、花きの種類と植物病の組合せによっては皆無の場合もあり、薬剤防除が難しいのも事実である。そこで本稿では、物理的防除の一つである光照射による防除の可能性についてバラうどんこ病を例に考えたい。

光照射による「うどんこ病」の防除効果

UV-Bは波長が280~315 nmの光であり、日焼けを引き起こす紫外線としても知られている。イチゴにUV-Bを照射すると病害抵抗性に関わる遺伝子の発現が誘導され、うどんこ病を実用レベルで防除できることが知られている(1, 2)。
バラの営利栽培において、うどんこ病はほぼ一年中発生し、薬剤防除では防除しきれないこともある厄介な植物病の一つである。そこで、このUV-Bをバラうどんこ病の防除に応用できないか検討したところ、ポット植えの試験で発病を抑えることができた(図1)。メカニズムは、イチゴと同様にUV-B照射によって植物体の病害抵抗性に関わる遺伝子が発現するためで(図2)、消灯後にはその遺伝子の発現量は無照射のときのレベルにまで低下する。しかし、1日6時間の照射を繰り返すとそのたびに病害抵抗性に関わる遺伝子が発現することが確認されている(3)。
さらに営利栽培している施設で、通常の薬剤防除に加え、UV-Bの照射器具を4~5 mおきに設置して照射したところ、薬剤防除だけの時以上に発病を抑えることができた。さらに、バラうどんこ病菌の分生子(胞子)の発芽率は、UV-B照射強度が強くなるに従い低下した(4)。このように、UV-B照射によりバラでのうどんこ病抵抗性が高まることに加え、UV-B光線によりうどんこ病菌の胞子の発芽率も低下するため、より防除効果が上がる。

  • 図1. UV-B照射の有無によるうどんこ病の発生
    左:UV-B照射、右:無照射 (神頭武嗣氏原図)
  • 図2. UV-B照射による防御関連遺伝子の発現確認モデル試験
    左:可視光+UV-Bを照射、右:可視光のみ照射

さいごに

UV-Bはうどんこ病の防除手段として有効であるが、強度が高すぎると植物自身に障害が生じるので注意が必要である。バラでは葉の脱色のほか、濃赤色の一部品種では花弁に黒ずみやかすれの障害が起こることがあり、花きではこのような見栄えを損なう障害は商品価値の低下を招く。イチゴでは、草丈が伸びても20~30 cmであるため、UV-Bランプの設置位置から植物体までの距離はほぼ一定に保たれ、商品となる果実に障害を起こすリスクは低い。しかし、バラは同じ株の中でも発芽直後の短い花茎から開花直前の草丈1 m以上の花茎が混在し、さらに開花時の草丈は季節によって変化する。また、品種ごとに障害の種類も異なる。従って、UV-Bランプの設置位置や照射時間の調整などにより生育や品質に影響のない照射強度を確認しながら利用する必要があろう(図3)。UV-Bによる防除はバラうどんこ病の有効な物理的防除法となり得るので、農薬を上手に組み合わせた総合的な防除手段の一つとして利用して頂きたい。

  • 図3. 栽培が進むにつれて上方に伸びる
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ISSN 2758-5212 (online)