多雨条件の日本で効果的に温州ミカン黒点病を防除するには

和歌山県果樹試験場うめ研究所 井沼 崇*
和歌山県農林水産部農業生産局果樹園芸課 武田 知明
和歌山県果樹試験場 直川 幸生
*責任著者

はじめに

黒点病は温州ミカン果実の見た目を悪くし、流通価格を下げる(1)。本病を効果的に防除するためには、予防が最も重要であり、幼果期から収穫時期近くまで続けて薬剤を散布する必要がある。したがって雨の多い日本では薬剤の耐雨性が重要となる。現在、主に使用されているマンゼブ水和剤600倍液は、散布後1か月、または累積降水量が200~250mmに達するまで効果が持続する有効な薬剤である。しかし、1日の降水量が200mm以上の年間日数が全国的に増加傾向にあり(2)、とくに集中豪雨が頻発する近年、短期間でマンゼブ水和剤の効果が切れる恐れがある。そこで、耐雨性に優れ、多雨条件下でも効果的な黒点病の予防策について考えてみる。

パラフィン系展着剤を加えたマンゼブ水和剤の高濃度散布の効果

今回、パラフィン系展着剤をマンゼブ水和剤に加えて散布し、予防効果を調べたところ(3)、展着剤により耐雨性が向上した(図1)。また、マンゼブ水和剤の使用基準上限濃度400倍液(温州ミカンは400倍液、それ以外のカンキツは600倍液が上限濃度)で散布したところ、展着剤なしの場合で累積降水量411mmまで効果が持続したのに対し、パラフィン系展着剤を使用すると同597mmまで効果が持続した(図1)。さらに、パラフィン系展着剤を加用したマンゼブ水和剤400倍液を黒点病菌の主な感染時期(5月から8月)に約1か月間隔で散布したところ、マンゼブ水和剤600倍液のみ使用の場合に比べ高い効果を示した。したがって、展着剤を加えたマンゼブ水和剤400倍液は耐雨性が高く、1か月以内または累積降水量500~550mmを目安に追加散布する方法が有効と考えられた。

  • 図1. パラフィン系展着剤の加用によるマンゼブ水和剤の耐雨性の向上

その他の薬剤の活用

ただし、マンゼブ水和剤の使用回数は1作で4回までである。したがって、降雨がさらに多くなった場合、他の薬剤が必要となる。マンゼブ水和剤以外の薬剤について予防効果を調べたところ、ジチアノン水和剤はマンゼブ水和剤600倍液と同等の耐雨性を示した(4)。つまり、累積降水量が200~250mmに達するまで効果が持続すると期待される。ただし、ジチアノン水和剤はマシン油乳剤(ハダニ類等の虫害対策で使用される)との混用や近接散布、夏期高温時の使用を避ける必要があるので散布条件に注意が必要である。また、9月以降の収穫時期近くに薬剤防除せざるをえない場合には、収穫前日数(散布から収穫まで空けるべき日数)が短いテブコナゾール・トリフロキシストロビン水和剤、クレソキシムメチル水和剤等が有効である。

多雨条件でも効果的な防除体系

以上について、耐雨性に優れる防除体系を図2にまとめた。まず、主感染時期の初回防除にあたる5月下旬にジチアノン水和剤を散布し、その後のマンゼブ水和剤の散布回数確保につなげる(ただし、マシン油乳剤との散布間隔を1か月以上確保できる場合に限る)。ジチアノン水和剤散布後の追加散布の目安は、散布後1か月または累積降水量200~250mmとする。その後、8月下旬にかけてはパラフィン系展着剤を加えたマンゼブ水和剤400倍液を散布し、追加散布の目安は散布後1か月または累積降水量500~550mmとする。収穫が近い時期の散布や多雨により使用回数の上限まで散布済みとなった場合の追加散布には、テブコナゾール・トリフロキシストロビン水和剤等を選択する。このような防除体系により、多雨条件の年でも黒点病に対する高い予防効果を得ることができる。

  • 図2. 耐雨性に優れる温州ミカン黒点病の防除体系
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ISSN 2758-5212 (online)