ハウス栽培ミカンに発生した気門封鎖剤による果実障害

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長崎県立農業大学校 養成部園芸学科
宮崎 俊英

ハウス栽培ミカン(温州ミカン)に対して天敵製剤「スワルスキー」の試験を行っていたが、その期間中に散布した気門封鎖剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル乳剤)が原因と思われるミカンの果実障害について紹介する。

2019年にハウス栽培ミカンに対して「スワルスキー」を放飼してハダニの発生を抑制する試験を実施した。3月中旬に2回目の放飼をする計画だったので、その前に一部で発生したハダニに対し、気門封鎖剤を使用した。
その後、4月上旬に生産者から果実に汚れ、傷が発生しているとの連絡があった(図1,2)。確認をすると確かに黒い薬液の痕のような汚れとリング状の傷ができていた。農薬メーカーの技術顧問とも一緒に確認したが、ハウス中央部の樹に症状が多く発生している傾向が見られた。
散布状況の聞き取り調査を行ったところ、散布当日は昼食のため作業を一時中断していたことが分かった。15aのハウスに対し1,000Lの薬剤を散布したため、時間がかかったとのことである。ハウス中央部の樹で果実への被害が多かったのは、昼食後に散布を再開した箇所の樹であったことから、薬液タンク内で濃度が濃くなった下層部の薬液がかかったものと推察された。
気門封鎖剤の使用時の注意に「使用量に合わせ薬液を調製し、使いきること」、「散布液調製の際はよくかき混ぜ、調製後はなるべく早く使用すること」とあるが、その通りの使用とはならなかったことから症状が発生したものと思われる。なお、「スワルスキー」の放飼試験を同じ地区でもう一か所(8a)実施しているが、同じ気門封鎖剤を使用しても果実障害は発生しなかった。なお、ここでは面積が比較的小さかったので、散布作業は中断することなく行えていた。

  • 図1. リング状の傷
  • 図2. 黒い薬液痕
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ISSN 2758-5212 (online)