大橋 俊子
はじめに
アイオキシニル乳剤(商品名:アクチノールB乳剤)は、麦類やタマネギ等に適用のある茎葉処理型の除草剤である。本剤は麦類の出穂直前の「穂ばらみ期」まで使用可能なことから、広葉雑草の発生が目立つ春季に使用可能な除草剤として生産現場で常用されてきた。しかし、2年ほど前から販売中止の状態が続いているため、代替剤の情報が求められている。本稿では、アイオキシニル乳剤を含め、麦類の生育後半に使用できる茎葉処理型除草剤の3月下旬の麦類圃場における除草効果について紹介する。
3月下旬の麦類圃場に発生する広葉雑草に対する各種除草剤の効果
3月下旬は、気温の高まりとともに広葉雑草の自然発生が目立ってくる頃である。試験は、茨城県農業総合センター農業研究所(以下、茨城農研)(水戸市)の畑圃場で行った。3月下旬頃には、主にハルタデ(図1A)、シロザ(図1B)、ナズナ(図1C)等の一年生広葉雑草が発生し、薬剤処理時の葉齢は2.5~3.5葉期であった。
供試除草剤は、アイオキシニル乳剤を含め、麦類の生育後半に使用可能な5剤を用いた(表1)。使用方法はいずれも「雑草茎葉散布又は全面散布」で、使用薬量は登録の範囲内で最大量とし、散布液量は100L/10aとした。3月下旬に各除草剤を散布し、4月下旬(散布後28日目)に残草個体について地上部乾物重を調査し、無除草区との比較により除草効果を評価した。
その結果、供試した5剤のうちアイオキシニル乳剤、チフェンスルフロンメチル水和剤(商品名:ハーモニー75DF水和剤)、ピラフルフェンエチル水和剤(商品名:エコパートフロアブル)およびベンタゾン液剤(商品名:バサグラン液剤(ナトリウム塩))の4剤は、地上部乾物重が無除草区比3%以下と広葉雑草に高い除草効果を示した(表1)。
各種除草剤の使用時期からみた実用性
茨城農研(水戸市)における3月下旬時点の麦類の生育ステージは、11月上旬播種の六条大麦および小麦で節間伸長期~穂ばらみ期、11月下旬播種の小麦で節間伸長期である(1)。
これらの生育ステージ(幅のある場合は早い方)を各除草剤の登録上の使用時期と照合したところ、小麦ではチフェンスルフロンメチル水和剤およびベンタゾン液剤の2剤が使用可能であった。一方、大麦では麦の生育ステージおよび収穫前日数の観点から、3月下旬に散布する場合、アイオキシニル乳剤の代替となる除草剤はないことがわかった(表2)。
おわりに
今回の試験結果から、小麦ではチフェンスルフロンメチル水和剤、ベンタゾン液剤の除草効果が高く、使用時期の面からも、アイオキシニル乳剤の代替剤として実用的であることが明らかになった。しかし、大麦では有効な代替除草剤がなく、広葉雑草の防除が困難となる。
以上述べてきたように、麦類の生育後半に使用できる除草剤は限られており、選択肢が少ないのが現状である。今後、既存除草剤の使用時期の拡大が望まれるとともに、アイオキシニル乳剤の販売再開にも期待したい。