レター
植物医師
堀田 治邦
コスモスは景観作物として親しまれているが、切り花生産も行われていることをご存じだろうか。北海道でもわずかに生産が行われているようである。このコスモスに発生する病害の情報は少ないが、よく目にする白斑病とうどんこ病について解説しよう。
北海道では両病害の発生時期が異なる。まず白斑病は7月下旬頃に発生し、初発から7~10日程度でかなりの葉に白色の病斑が形成される(図1)。病斑は下葉に多く形成され、植物の生育とともに上葉へ拡がっていく。やがて下葉の病斑は病斑同士が合わさって褐色病斑へ変わる(図2)。その後、褐色病斑は葉全体に及んで枯れ込み、すそ枯れ症状となっていく。病斑の進展は秋遅くまで継続される(1)。一方、うどんこ病は盛夏を過ぎた初秋から発生しはじめる。葉に白色の病斑が形成されるが(図3)、植物の生育が進んだ時期なので、白斑病とは異なり下葉~上葉を問わずランダムに病斑が認められる。また、茎にも白色病斑が形成される。白色病斑はうっすらと葉表面全体を覆うが、葉枯れになることはほぼない。初冬期になると、うどんこ病斑の中に褐色で小さな粒状の形成物が多数観察されるようになる(図4)。
発生時期や病斑の違いから両者の判別は容易であるが、白斑病だけ、特に初期病斑を見た場合、うどんこ病?と思ってしまうかも知れない。畑作農家で小麦のうどんこ病を良く目にしている生産者であればなおさらで、病斑の形成や発生の仕方がよく似ており、間違えやすい。正直に言うと、このコスモス白斑病の診断を依頼された時、典型的なうどんこ症状だったので、検鏡もせずに‘うどんこ病’と返答してしまった苦い経験がある。心配な方はぜひ公的機関や植物医師®などの専門家への診断依頼をお勧めする。