iPlant編集委員長 渡邊 健*
*責任著者
はじめに
論文誌iPlant®は植物医科学の専門家である植物医師®が中心となって執筆し、植物病対策などの研究成果を農業生産者向けにわかりやすく解説する、無償で誰でも読める電子ジャーナルである。本誌は2023年1月に創刊し、現在2年目を迎えている。ここでは、創刊から現在までを振り返り、電子ジャーナルiPlant®の現在地と今後について考えてみたい。
ジャーナルの現状
1. 掲載記事とその内訳
これまで本誌は毎月刊行されており、2023年の1年間で12号、2024年2月末時点では2巻1号、2号を含めた合計14号が掲載されている。掲載した論文数は各号6~8報で、1年間で76報(うちレター4報)、2024年2月末時点では88報(うちレター8報)が掲載されている。2月末時点での掲載記事の内訳は、病気(カビ、バクテリア、ウイルスによる病害)に関する内容が半数以上(57%)を占め、次いで害虫(14%)、病害虫両方(4%)、雑草(3%)、鳥獣害・線虫(各2%)と続く。生理障害やその他トピック(土壌還元消毒やドローン防除、画像診断、外来生物法など)は18%を占める(図1)。作物分類別では、野菜類に関する内容が26%と最も多く全体の約1/4を占め、次いで普通作物(水稲、麦類、大豆)・果樹類(各12%)、イモ類・花き類(各7%)、茶(5%)、芝(4%)と続く。作物を特に指定していない記事は27%を占める(図2)。品目別でみると、野菜類ではイチゴやキュウリ、普通作物では水稲や麦類、果樹類ではリンゴ、イモ類ではカンショ(サツマイモ)などの記事が多く掲載されている。
2. ジャーナルサイトへのアクセス数と記事の閲覧数
本誌の掲載が2023年6月上旬に現在のサイトにリニューアルされてから、2024年2月末までのジャーナルサイトへのアクセス数(人数)と記事の閲覧数について、Google アナリティクス 4(GA4)を用いて解析した。ユーザーが単一のデバイスでサイトにアクセスした場合、何回アクセスしてもユーザー数は1として計測され、これをアクセス数(人数)とした。また、記事のウェブページが表示された回数を記事の閲覧数とした。解析の結果、本誌はこれまでに約2万人の方にアクセスいただいており、その人数は増加傾向にあった。例えば2023年6~12月までの7ヶ月間でみると、6月にサイトを訪れた人数は約1,000人だったが、12月には約3,000人にまで増えている(図3)。これは本誌の認知度が少しずつ高まっていることに加え、記事数が豊富になったこともあり、ネットのキーワード検索で上位に表示されやすくなった可能性が考えられる。実際、2024年1~2月の2ヶ月間で初めてサイトを訪れた方は約4,700人で、月当たり2,000人以上の方が初めてサイトを訪れていることになる。なお、サイトを複数回訪れているリピーターの方は2024年2月末時点で約2,500人となっている。
閲覧数が上位の記事は4,500回以上閲覧されているブロッコリー黒すす病に関する記事を筆頭に、イチゴ、ピーマン、キュウリなどの野菜類が占めており(表1)、読者の関心が高いことがわかる。これらの記事はGA4の解析の結果、「ブロッコリー 黒すす病」「イチゴ 炭疽病 初期症状」「ピーマン 炭疽病」「キュウリ 萎れる 病気」など、ネットのキーワード検索で上位に表示されてクリックされている傾向にあった。したがって、検索されやすいキーワードをタイトルに入れることで、多くの農業生産者の方に記事が閲覧されやすくなると考えられる。
おわりに
創刊2年目を迎え、本誌が今後より多くの方に閲覧いただけるようにするためには、読者のニーズを反映していく必要がある。最近ではドローン防除や農薬の適切な使用方法に関する記事も出てきているが、病気を発生させない土作りや省力的で環境負荷の少ない防除方法、国内侵入を警戒している病害虫など、植物病防除に関する多岐にわたる話題を提供することが読者層を広げる上で重要だと思われる。また、一部の記事では動画を載せているが、まだ数は少ない。わかりやすい情報提供のために、こうしたインターネットメディアの特徴を生かした記事を今後増やしていきたい。
読者の方には、本誌を引き続きご愛読いただくとともに、掲載記事の希望があれば、遠慮なくお問い合わせフォームから連絡いただきたい。