9月収穫のブロッコリーに発生した細菌病-花蕾腐敗病-

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株式会社東日本肥料
白石 俊昌

本年、群馬県渋川市の9月収穫のブロッコリーに、花蕾が黄化し茎が黒いシミのように変色する症状が多発した(図1A,B)。発生圃場は中山間地帯で標高500m、栽培期間中は平均気温25℃前後、最高気温は30℃を超えることもある栽培環境であった。
発症した花蕾を生物顕微鏡で観察すると、細菌の感染が確認された。悪臭は無いため軟腐病菌以外の細菌によるものと思われた。べと病、すす病などとも発病環境が異なり、黒腐病とは病徴が異なることから花蕾腐敗病(1)と診断した。品種は早生種の「プライム」(株式会社ブロリード)で付近の圃場の他品種に発病が少ないことから、本品種の細菌病に対する感受性が高いことも考えられる。
花蕾腐敗病は北海道(2)や長野県(3)など、全国各地で発生が見られており、病原となる細菌は数種類が報告されている。今回は病原菌の同定を行わなかった。

  • 図1.ブロッコリー花蕾腐敗病
    A.花蕾上部
    B.花蕾内部

多発要因について

今回被害のあった圃場は適切な防除が行えず、発病後は収穫を断念した。多発要因は第一に高温と多雨によるもの、加えて品種の花蕾腐敗病に対する感受性が高かった可能性も考えられる。さらに、栽培者は黒すす病の発生を念頭に置いた薬剤散布を行っており、これが細菌病である花蕾腐敗病を防げなかったもう一つの要因である。また、同じ作型でポリマルチを使った圃場に発病が多く、裸地圃場では発生が少なかった。これはマルチ栽培により肥効が高まり、窒素過多が花蕾腐敗病の発生を助長していたことも考えられる。

防除について

北海道の報告(2)によれば花蕾発生時期に銅剤の2回散布に効果があり、石灰資材の投入や葉面散布の発生軽減効果が報告されている。さらに施肥量の見直しも同様の効果が見られている。また、長野県では生物防除剤による防除効果も期待出来るとの報告もある(3)。現場では来年の栽培にはこうした情報を活用するよう助言した。

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ISSN 2758-5212 (online)