静岡県農林技術研究所伊豆農業研究センター
片井 祐介
農作物や家庭環境を荒らす鳥獣の被害対策として、「捕獲」は重要な取組である。捕獲については、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律「以下:鳥獣保護管理法」による規制があるが、鳥獣の種類や時期、場所などによって対応が異なり、非常に複雑である。そのため、本稿で全てを説明する事はできないが、生産者が直面する可能性のある鳥獣について抜粋して説明する。
鳥獣保護管理法の対象鳥獣と例外規定
鳥獣とは、「鳥類又は哺乳類に属する野生生物」とされている。原則として許可なく捕獲することはできないが、例外として、アシカや海棲哺乳類の一部、いえねずみ3種(ドブネズミ・クマネズミ・ハツカネズミ)が指定されている(鳥獣保護管理法第八十条)。このうち農業生産者が関係するものは、いえねずみ3種だと思われるが、これは自由に捕獲することができる。また、モグラ科全種およびネズミ科全種(上記いえねずみ3種以外)について、農業または林業の事業活動に伴い捕獲がやむを得ない場合については、許可無く捕獲することができる(鳥獣保護管理法施行規則第十二条)。
狩猟鳥獣と非狩猟鳥獣
鳥獣保護管理法では捕獲が許可される狩猟鳥獣(鳥類26種・獣類20種)とそれ以外の鳥獣(非狩猟鳥獣)に分けられ、対応が異なる。農業被害の多いイノシシ、ニホンジカ、アライグマ、ハクビシン、ヒヨドリ、カラス、スズメ、人的被害のあるヒグマ、ツキノワグマは狩猟鳥獣であるが、農業被害が多く身近なニホンザル(図1)については非狩猟鳥獣であるため注意が必要である。狩猟鳥獣については、狩猟期間中に鳥獣保護区など禁止された場所以外で、法定猟具(銃・わな・網)を利用し、それに対応した狩猟免許を持つ者が狩猟者登録をすれば捕獲可能である。なお、狩猟期間は都道府県ごとに定められており、筆者の居住地である静岡県では令和6年度は11月15日~2月15日(ニホンジカ・イノシシは11月1日から3月15日)となっている。なお、狩猟登録がなくても法定猟具以外の捕獲(手獲り、捕虫網など)であれば誰でも捕獲できる。また、ツキノワグマについては、狩猟鳥獣であるが、保護の観点から捕獲を規制している地域もある。
狩猟期間外及び非狩猟鳥獣の捕獲
狩猟期間以外および非狩猟鳥獣(ニホンザルなど)の捕獲については、すべて許可が必要である。許可については、鳥獣の種類により、環境省、都道府県、市町村に分かれているが、イノシシなど被害が多く、個体数の多い鳥獣については市町村が窓口になっている事が多い(都道府県により対応が異なる)。
捕獲については、鳥獣保護管理法以外にも特定外来生物法など様々な法律での規制があったり、市町村ごとの許可基準の違いがあるなど説明を始めると際限がなくなる。また、上記以外にも様々な例外規定があるが、紙面が限られているため、今回は簡単な説明のみ行った。そのため、実際に捕獲を検討する際には、ほ場のある市町村の鳥獣保護担当者へ相談することが一番の早道である。