小俣 良介
はじめに
前稿に引き続き、米ぬかを使ったカイガラムシの防除を取り上げる。本稿では、農薬の効果判定法(1)にならって、チャの害虫クワシロカイガラムシ(以下、クワシロ)に対する米ぬかの防除効果を紹介する。
米ぬかの施用量
チャ株内に背負い式動力噴霧器で水を散布し、その後、チャ株の樹幹面を手で広げてチャ株内が見えるようにし、米ぬかを幹枝に付着させた。チャ株の枝幹に米ぬかが均等に付着するときの単位面積当たりの米ぬか重量を推定したところ、40kg/10aの処理でチャ株内の枝に十分付着し、この施用量は妥当な範囲と考えられた。
クワシロに対する効果
2007年にクワシロの発生が認められる生産者圃場で予備的な試験を実施した。その結果、雄まゆ発生量はDMTP乳剤(DMTP40.0%。現在は製造中止)散布後の米ぬか処理区で最も少なかった。次いでDMTP乳剤単独処理区、無処理区の順(2)となり、薬剤との併用ではあったものの、クワシロに対して米ぬかはある程度の抑制力があることを確認できた。
その後クワシロの発生範囲が拡大し2010年には茶研内の県予察ほ場(品種:やぶきた40年生)でも防除試験ができる程度の発生が見られたため、米ぬか単独の防除効果を検討した。その結果、DMTP乳剤散布後に米ぬかの追加処理を行った区でクワシロの発生が最も少なくなり、次いで米ぬか単独処理区、DMTP乳剤単独散布区が同程度の防除効果を示した(図1)(3)。
ツノロウムシに対する効果
クワシロとともに発生が問題化していたカイガラムシ類であるツノロウムシに対しても、米ぬかの防除効果を検討した。ほ場はツノロウムシの発生が比較的多い茶園(品種:やぶきた、38年生)を用い、試験はふ化幼虫期に実施した。ここでも、DMTP乳剤散布後に米ぬかの追加処理を行った区でツノロウムシの発生が最も少なくなった。また米ぬか単独処理区、DMTP乳剤単独散布区でも無処理区と比較して約半数の虫数となり、米ぬか処理はツノロウムシに対しても防除効果があると考えられた(図2)(3)。
米ぬかの施用方法
最後に、米ぬかの施用方法について紹介したい。2010年当時、生産現場では既に米ぬかの利用が大いに普及し(4)、地元の米ぬかを扱う商店の在庫が枯渇するほどであった。しかし、米ぬかの散布には労力がかかることから、商店の一つ株式会社坂宗が農業機械を扱う株式会社丸山製作所に協力を依頼し米ぬか散布機を試作・開発した(図3左)。これは米ぬかを水に溶いて散布する装置で、米ぬかによってノズルが詰まらないように工夫されている。今回紹介した試験の一部でも、この米ぬか散布機を使用したたたき散布法(図3右)により米ぬか処理をしている。
引用文献
- 日本植物防疫協会ホームページ「調査法一覧 茶【虫害】」(2023年9月12日閲覧)
- 茶業特産研究所 (2009) 「埼玉県におけるクワシロカイガラムシの発生生態と米ぬかによる発生抑制技術」埼玉県農林総合研究センター新技術情報, ¥茶09-02(一部修正).
- 小俣良介 (2011) 「米ぬかの茶株内処理によるカイガラムシ類の発生抑制」茶業技術54:3-7.
- 農山漁村文化協会 (2010)「茶のクワシロカイガラムシにも米ヌカ防除が大流行」 現代農業2010年6月号pp.140-147.