野村 研
はじめに
コナギ(Monochoria vaginalis)はミズアオイ科ミズアオイ属に分類される1年生の水田雑草である。また、水稲の生育や収量に大きな影響を及ぼすため、稲作で最重要とされる「ノビエ」などとならぶ雑草の一つである。最近、問題となっている水田雑草のスルホニルウレア系除草剤(SU剤)抵抗性について、コナギを例に挙げ紹介する。
水稲における一般的な雑草防除
栽培初期に一発で雑草を防除処理する除草剤(初期一発処理剤)には、ノビエに効果のある成分と、その他の一年生広葉雑草や多年生雑草に効果のある成分が2~4種程度含まれている。通常は、初期一発処理剤を田植と同時に施用するか、または田植前後に水田内に散布して、ノビエをはじめとする雑草を防除する。その後、雑草の発生状況を見ながら、水稲の生育がある程度進んだ後に使用できる中期剤や後期剤を処理するのが一般的である。除草剤を効果的に使用するには、丁寧に代掻きをして田面を均平で漏水(ろうすい)などがないようにし、一週間は水深を一定に保持する必要がある。それでもなお、草が残る場合には、雑草が除草剤に対する抵抗性を有している可能性がある。
SU剤抵抗性雑草
SU剤は多くの水田雑草防除に有効で、人畜に対する毒性が低いことから、水稲作の一発処理剤として普及している。しかし、1990年代からSU剤に対して抵抗性を示す水田雑草が見つかり、全国で問題となっている(1, 2)。コナギにおいても水稲の初期除草剤施用後に残存する例が多発している。
抵抗性の実態
ノビエに対して効果の高いオキサジクロメホンとSU剤であるベンスルフロンメチルを混合した除草剤を施用しても、防除されず正常に生育するコナギが認められる(図1)。これらの2剤に加え、SU抵抗性雑草に対して防除効果があるとされるクロメプロップ剤を混合した除草剤を施用すると上手く防除できる(図2)。このことから、コナギのなかにSU剤抵抗性を示す性質の異なる系統(バイオタイプ、生物型)があることが分かってきた(3,4)。
防除対策
抵抗性雑草を増やさないようにするためには、同一除草剤の長期連用を避ける必要がある。SU剤抵抗性が確認された場合は、効果があるとされるほかの除草剤を選んで防除してみるべきである(5)。初期剤処理後に雑草の多発生が認められた場合は、中後期剤に初期剤と異なる適切な剤を使用して確実に防除するようにし、水田内の種子密度を高めないように気をつけることが大切である。
引用文献
- 古原洋 (2015) 「北海道における除草剤抵抗性雑草の発生状況と対策」農業及び園芸 90 : 191-197.
- 内野彰 (2022)「これまでに日本で除草剤抵抗性が報告されている雑草」 除草剤抵抗性雑草研究会ホームページ(2023年4月23日閲覧)
- 聖代橋史佳・上西愛子・久保深雪・野村研 (2017)「神奈川県におけるスルホニルウレア系除草剤抵抗性雑草の現状」神奈川県農業技術センター研究報告 161 : 7-16.
- 農耕と園藝Onlineカルチベホームページ (2021) 「バイオタイプ」 (2023年4月23日閲覧)
- 公益財団法人日本植物調節剤研究協会ホームページ 「除草剤抵抗性雑草とその防除【水稲分野】」(2023年4月23日閲覧)